なぜ宝くじは買い続けると損なのか?——「確率」で習ったあの話

数学

ゴールデンウィーク中、にぎやかな商店街を歩いていると、宝くじ売り場の前に長い列ができていました。「今度こそ当たるかも」という期待に胸を膨らませた人々が、1枚300円のくじを手に取っています。

私も教壇に立っていた頃、毎年年末ジャンボを買う同僚がいました。「先生、今年もハズレやったわ」と苦笑いしながらも、翌年また買う。その繰り返しを何年も見てきました。そのたびに私は心の中でつぶやいていたのです。「それ、数学で説明できるんだよなあ」と。

「宝くじは夢を買うもの」——それは本当ですが、その「夢の値段」を数字で計算した人は意外と少ないものです。

中学数学の「確率」と「期待値」

「確率」といえば、サイコロやコインを使った計算を思い出す方も多いのではないでしょうか。「コインを投げて表が出る確率は2分の1」——あの授業です。中学校の数学の時間に、教科書を開いて「P(事象)=有利な場合の数 ÷ 全体の場合の数」という公式を書き写した記憶がありませんか?

でも実は、確率の中に「期待値」という概念があります。これは「ある行動を繰り返したとき、平均していくら得られるか」を数字で表したものです。学校では確率の発展として登場することが多いのですが、これこそが宝くじを理解するカギになります。

期待値」とは、「何度も繰り返したときの、1回あたりの平均的な結果」のこと。これを知るだけで、世の中の「損か得か」が見えてきます。

「期待値」をやさしく説明

少し数字を使って説明しますね。ご安心を——難しい計算はしません。

たとえば、こんなゲームがあるとします。「参加費100円。サイコロを振って6の目が出たら600円もらえる。それ以外はハズレ」

6が出る確率は6分の1です。つまり、6回やれば平均1回は当たる計算。1回当たると600円もらえるので、6回で600円の収入。でも参加費は6回×100円=600円。差し引きゼロです。これが「期待値100円」の公平なゲームです。

では宝くじはどうでしょう?ジャンボ宝くじ(1枚300円)の場合、当選金の総額をユニット内の本数で割ると、1枚あたりの「期待値」は約150円前後と言われています。つまり、300円を出して平均150円しか返ってこない計算になります。

「返戻率(へんれいりつ)」という言葉があります。「払ったお金のうち、何%が賞金として戻ってくるか」を示す割合です。宝くじの返戻率は約45〜50%。これは公営競技(競馬:約75%)などと比べても低い水準です。

「1枚300円の夢の値段は、数学的には約150円。残りの150円は社会貢献のために使われます」——これが期待値の出す答えです。

「同じ原理」が使われている、身近な2つの場面

期待値の考え方は、宝くじだけでなく日常のあちこちに潜んでいます。

① スマホゲームの「ガチャ」

「SSRキャラの排出率1%」と書かれたガチャ。1回300円だとすると、SSRを1枚引くまでに平均100回、つまり30,000円かかる計算です。「いつかは当たる」という感覚は正しいのですが、「平均でいくらかかるか」という期待値の視点が抜け落ちると、気づけば大金を使ってしまいます。

私の知り合いに「キャラが出るまで引けば、getできる確率100%」と言っている人がいました。まさにその通りですが、期待値はいかほどだったのでしょうか…。

② 保険のしくみ

保険は「期待値で見ると損をする」代表例です。統計的に見れば、多くの人は払った保険料より受け取る保険金の方が少なくなります。それでも保険に入るのは、「万が一の大損失を防ぐため」——つまり確率は低くても、起きたときの影響が大きい出来事に備えるためです。期待値だけで判断できないのが保険の奥深いところ。「リスクを分散する」という考え方も、実は確率の応用なのです。

「学校の確率」が、大人になって生きてくる瞬間

「確率の計算なんて、社会に出て何の役に立つんですか」と聞かれたことがあります。それはよく聞かれる質問でした。

正直に言えば、「P=有利な場合の数 ÷ 全体の場合の数」という公式を日常でそのまま使う機会は少ないかもしれません。でも「起きやすさを数字で考える」という習慣は、間違いなく生きてきます。宝くじを買うにしても、保険を選ぶにしても、確率の感覚を持っている人と持っていない人では、判断の質が変わってくるからです。

確率の基本公式をもう一度思い出してみましょう。確率(P)= ある事象が起きる場合の数 ÷ 全体の場合の数

シンプルですよね。でもこの式が示しているのは、「世の中の出来事を、冷静に数字でとらえる視点」です。ギャンブルで熱くなっている人、保険の営業トークに流される人、ガチャに課金し続ける人——みんな、この「分母(全体の場合の数)を見忘れている」状態と言えます。

「分母を意識する」とは、「全体を見渡す」ということ。目の前の当たりへの期待だけでなく、「全体の中での自分の位置」を見ること。これは数学だけでなく、人生のあらゆる判断に通じる考え方だと、長年の教員経験の中で実感してきました。

「あ、学校で習った確率って、お金や日常の判断のためにあったんだ!」——そう気づいたとき、あの退屈に思えた授業が突然輝いて見えてくるはずです。

確率や数学をもう少し学び直したい方は、本を購入して学んでみるのはいかがでしょうか?
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また、お子さんから「これってどうやるの?」と聞かれた時に、困った経験がある方は、スタディサプリがおすすめです。中高の数学をプロ講師の動画でわかりやすく学べるうえ、月額料金も手頃で魅力的。ぜひご活用ください。

より深く知りたい方へ

宝くじの返戻率については、総務省が管轄する「当せん金付証票法」に基づき、各都道府県の宝くじ公式サイトで当選金の配分情報が公開されています。また、確率・期待値の基礎は中学校数学(学習指導要領:確率の領域)で体系的に学べます。公式を書き留めながら学ぶと、記憶への定着がぐっと高まりますよ。

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